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広島高等裁判所 昭和35年(ネ)79号 判決 1963年2月11日

控訴人 三浦一二三

被控訴人 国

訴訟代理人 森川憲明 外五名

主文

原判決を次のとおり変更する。

訴外三浦木材株式会社が昭和二九年一〇月一日から同三一年一一月二一日までの間において控訴人に対してなした金三、一七三、九八三円の弁済行為を金二、四〇三、五八三円の範囲において取り消す。

控訴人は被控訴人に対し金二、四〇三、五八三円及びこれに対する昭和三二年八月二六日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人その余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事  実 〈省略〉

理由

当裁判所もまた被控訴人の本訴請求中本件弁済行為の取消と訴外会社の滞納税額に相当する金二、四〇三、五八三円を返還すべきことを控訴人に求める部分を正当として認容すべきものと判断するのであるが(遅滞損害金の請求については後記のとおり。)その理由の詳細は左の二点を附加・訂正するほか原判決理由(別表(一)ないし(三)を含む。)に記載してあるところと同一であるからこれを引用する。

(一)  原判決九枚目裏五行目に「………認め得る。」とある次に「(甲第三号証中に正味財産九〇六、五八九円一二銭なる旨の記載があるのは、八四六、五八九円一二銭の誤算と認める。)」と挿入し、同九枚目表二行目に「昭和二十九年十一月六日」とあるのを「昭和二十九年十一月二十五日」と、同一〇枚目表三行目から四行目にかけて「同号証の九の一」とあるのを「同号証の九の一、二」と、同五行目に「金十三万七千二百九十円」とあるのを「金十三万七千二百九十二円」と、同一一枚目裏七行目から一一行目までを「本件弁済行為を取り消すべく、かつ、控訴人は被控訴人に対し前記滞納税額に相当する金二、四〇三、五八三円を返還すべき義務がある。」と各訂正する。

(二)  その方式及び趣旨により公文書と認められるから真正に成立したものと推定すべき甲第一一号証は原審の事実認定を支持するものであり、原審の認定に反する当審証人高辻亮方(第一、二回)、同田中俊雄の各証言、当審における控訴人本人尋問の結果は到底信を措き難く、その他原審の認定を左右するに足る新らたな証拠ははい。

次に、被控訴人は、右金二、四〇三、五八三円に対し本件詐害行為の日の翌日たる昭和三一年一一月二二日から支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による損害金の支払を求めている。しかして、訴外三浦木材株式会社のなした本件弁済行為は本件訴訟においてこれを取り消す旨の判決確定により控訴人・被控訴人間において遡つてその効力を失うものであるが、さりとて控訴人の被控訴人に対する本件弁済行為による受領金の返還債務が右詐害行為の完了とともにただちに履行遅滞に陥るものと解すべき根拠はなく、被控訴人が控訴人に対し右金員を支払うべき旨の意思表示を裁判上なしたときにおいてはじめてその履行期が到来し、このときから控訴人は遅滞の責に任ずるものというべきである。しからば、被控訴人の年五分の民事法定利率による右遅延損害金の請求は本件訴状送達の日の翌日であること記録上明白な昭和三二年八月二六日から元本完済にいたる間に生じた分については正当であるが、それ以前の分は失当として排斥を免れない。

以上を要するに、被控訴人の本訴請求は、金二、四〇三、五八三円の範囲における本件弁済行為の取消ならびに右金二、四〇三、五八三円及びこれに対する昭和三二年八月二六日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による損害金の支払を求める限度において正当として認容すべきもその余は失当として排斥を免れない。

よつて、以上と一部判断を異にする原判決を変更することとし、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第九二条但書により主文のとおり判決する。

(裁判官 河相格治 胡田勲 宮本聖司)

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